朱色の約束
ソウジ(Souji)77 回再生
埃を被った古い箱の中 二十年分の時間が眠る シャッターを下ろした商店街 現像液の匂いが揺れる 指先に触れた小さなリール 撮り忘れていた最後の一枚 暗闇の中で像が結ばれる ゆっくりと熱が蘇る 窓から差し込む西陽の色 あの頃の空気に似ているね 忘れていたはずの記憶が 静かに胸を叩いている 裏庭で僕は眠っていた 午後の陽射しに包まれて 君がレンズを向けてたことも 知らないまま 夢を見てた あんなに穏やかな顔をして 愛されていたんだね 僕は 遅すぎたけれど ありがとう 今はもう遠い人へ ゆらゆらと揺れる木漏れ日 キラキラと光る粒子の影 ピントが少しだけ甘いのは 君の手が震えていたせいかな 照れくさそうに笑う僕の 睫毛の先まで透き通る 今の僕よりずっと若い僕 何も持たずに満たされていた このままでも良かったんだと 二十年後の僕が頷く さよならの理由は思い出せない 痛みはどこかへ溶けて消えた 君はどこかで笑っているかな 新しい誰かの隣で 裏庭で僕は眠っていた 午後の陽射しに包まれて 君がレンズを向けてたことも 知らないまま 夢を見てた あんなに穏やかな顔をして 愛されていたんだね 僕は 遅すぎたけれど ありがとう 今はもう遠い人へ ビオラの音が低く響く ウッドベースが歩幅を刻む 後悔なんて一つもないよ この一枚に出会えたから 綺麗なままで 閉じておくよ 優しさに満ちたあの時間を 裏庭で僕は眠っていた 午後の陽射しに包まれて 君がレンズを向けてたことも 知らないまま 夢を見てた あんなに穏やかな顔をして 愛されていたんだね 僕は 遅すぎたけれど ありがとう 今はもう遠い人へ 銀色の枠に 収めた光 レジの横に 飾っておくよ 新しいフィルムを入れ替えて 少しだけ眼鏡を拭き直す ドアのベルが小さく鳴るのを 僕はここで待っているから いつものように 日常の中 静かな呼吸を 繰り返す
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