雨溜まりのレシピ
ソウジ(Souji)71 diputar
十年ぶりの 潮の香りが 鼻の奥を 柔らかく突く 錆びた手すり 暮れる堤防 影が長く 伸びていく コンクリートに 残る落書き あの頃の僕 尖っていたね 浪人の冬 閉ざした心 誰の言葉も 響かずに 秋風が 手の甲を撫でて 呼び覚ます 遠い記憶を 紙袋から 漏れる湯気が 視界を白く 染めていった 無口な背中 追いかけて 渡されたのは 焼き芋一つ 「食え」と一言 ぶっきらぼうに 重なる指の 節くれだつ熱 言えなかった 「ありがとう」が 潮騒に 溶けて消える あの温もり 忘れないよ 夕闇が 街を包む 遠く点滅 漁火の群れ 厳格だった 父の横顔 今ならわかる あの静寂が どれほど深い 愛だったか ごつごつとした 大きな手が 僕の肩を 叩いた感触 言葉よりも 確かな重さ 今もこの身に 宿っている 紫の空 黄金に変わり あなたは今も 見守っている そんな気がして 涙がこぼれる 頬を伝って 乾いていく 情けなくて 優しい愛を 抱きしめて 僕は歩く 僕は今も 泥臭く生きる 誇れるほど 強くないけど あなたがくれた あの温もりを 次の誰かに 繋ぎたいから 一歩ずつ 前へ踏み出す 無口な背中 追いかけて 渡されたのは 焼き芋一つ 「食え」と一言 ぶっきらぼうに 重なる指の 節くれだつ熱 言えなかった 「ありがとう」を 心の中で 繰り返した 潮風が 頬を撫でて 「大丈夫」と 囁いたんだ
Memuat…