shibuya kei

30分のフィクション

ソウジ(Souji)

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Paroles

古書店街の路地裏
赤いネオンが手招く
ラムの香りと古い紙
湿った夜を泳いで
辿り着いた止まり木
終電を逃した僕ら

薄めのカシスソーダ
グラスの汗を指でなぞる
君が語る好きな作家
廃盤のシャンソンが
静かに回る午前二時

名前も知らないまま
30分だけのワルツ
春の小雨が跳ねる
アスファルトのオレンジ
始まらないからこそ
永遠に美しいままで
心はふわりと軽くなる

カシスが溶ける頃に
僕らは他人へ戻る
名前も聞かないルール
それが粋なエチュード

ベロアの椅子の爪跡
並んだ文庫の背表紙
軒下で雨宿りする
ノラ猫の眠そうな目
都会の夜の片隅
自分だけの秘密の場所

連絡先は聞かない
水滴の筋を見つめてる
君の笑い声の余韻
窓の外の小雨が
リズムを刻む四拍子

サヨナラさえ言わずに
30分だけのフィクション
春の小雨が跳ねる
アスファルトのオレンジ
始まらないからこそ
永遠に美しいままで
明日の足取り軽くなる

もしも続きがあったなら
この色は濁っただろう
微かな切なさの奥で
甘い記憶が透き通る
短編小説を閉じるように
扉を開けて夜の中へ

名前も知らないまま
30分だけのワルツ
春の小雨が跳ねる
アスファルトのオレンジ
始まらないからこそ
永遠に美しいままで
心はふわりと軽くなる

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